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静岡地方裁判所浜松支部 昭和43年(ワ)205号 判決 1969年2月14日

主文

被告等は各自原告幸太郎に対し金一〇二万三、五七〇円、原告すみえに対し金一〇二万三、五七〇円及び右各金員に対する昭和四三年六月二六日以降各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は二分し、その一を原告等のその余を被告等の連帯負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、

「被告等は各自原告幸太郎に対し金弐百万円、原告すみえに対し金弐百万円及び右金員に対する本訴状送達の翌日である昭和四三年六月二六日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え

訴訟費用は被告の負担とする。」

との判決を求め、

その請求原因として

「一、被告鈴井武久は昭和四二年一一月二四日午後五時三五分頃被告会社保有に係る小型貨物自動車を運転して浜松市三島町一二一一番地先に至つた処、前方不注視の過失により訴外刑部みさ子に衝突転倒せしめ、頭部その他全身打撲により昭和四二年一一月二四日午後八時五十分死亡した。

二、亡みさ子の逸失利益

亡みさ子は死亡当時九才であり、女子であるため稼働期間は一五才より結婚すると考えられる二五才に達する迄一〇年間とし、浜松市における中学卒初任給は昭和四三年度は一万六、六六六円であり毎年千円宛昇給し、二五才の時は金弐万五、六六六円であるが生活費五〇%を差引くときは

純収入 生活費残(千円以下切捨)

死後六年目 一九九、九九二 九九、〇〇〇

〃七年目 二一一、九九二 一〇五、〇〇〇

〃八年目 二二三、九九二 一一一、〇〇〇

〃九年目 二三五、九九二 一一七、〇〇〇

〃一〇年目 二四七、九九二 一二三、〇〇〇

〃一一年目 二五九、九九二 一二九、〇〇〇

〃一二年目 二七一、九九二 一三五、〇〇〇

〃一三年目 二八三、九九二 一四一、〇〇〇

〃一四年目 二九五、九九二 一四七、〇〇〇

〃一五年目 三〇七、九九二 一五三、〇〇〇

計 一、七六一、〇〇〇

となり之をホフマン式計算法による現在価格は金壱百六万六千円となり両親である原告等その半額を相続した

三、而して被害者刑部みさ子の慰藉料は、金弐百万円を相当とし之を半額宛相続した

四、然し之に対しては自動車保険により金弐百八拾五万円及び被告会社より金一五万円の支払を受けたので之を右の逸失利益及び慰藉料に充当する

五、而して原告等はその両親として極めて大きな精神的損害を蒙つたので之に対する慰藉料として一人金弐百万円宛を請求する次第である。」

とのべ、

被告主張の抗弁事実を否認し、〔証拠略〕を提出し、〔証拠略〕を援用した。

被告等訴訟代理人は、請求棄却の判決を求め、

答弁として、

「原告主張の請求原因事実中

第一項、第二項は認める。

第三項、第五項は不知。

第四項中、合計金三百万円の支払があつたことは認める」

とのべ、

抗弁として、

「本件については幼い子供を暗くなりはじめた夕方しかも危険な大道路を横断する必要のあるタバコ屋に漫然タバコを買いにやらした原告らに大きな過失があると言わなければならない。

かつ、亡みさ子は本件事故のさい道路に突然とび出したことが十分うかがわれるのである。この被害者自体の過失と以上のべた原告らの親としての少からざる過失が相まつて本件事故の一つの大きな要因となつているのであるからしかるべき過失相殺がなさるべきものである。」

とのべ、

甲号各証の成立を認めた。

理由

原告主張の日時場所において、原告両名の養子たる訴外刑部みさ子が被告鈴井武久の原告主張のような過失により、その運転する被告会社保有の自動車により衝突され、原告主張のような負傷を負いその主張の日時に死亡したこと、右訴外みさ子の逸失利益が金一〇六万六、〇〇〇円であることは、当事者間に争いがない。

次に〔証拠略〕を綜合すれば、本件事故死による訴外みさ子の慰藉料は金二〇〇万円、原告両名のそれは各二〇〇万円を相当とする。従つて損害額は合計七〇六万六、〇〇〇円となる。

しかして、前記各証拠によれば、訴外みさ子にも道路横断に当つて、被告車の動静に注意すべき義務があり(同人は当時九才ですでに事理弁識の知能があると認められる)、その義務を怠つた過失があり(但し被告主張の如き原告両名の過失は認められない)、その過失の程度は被告鈴井のそれと比較して二対五と評価するのが相当である。

従つて前記七〇六万六〇〇円の損害額の七分の五である金五〇四万七、一四〇円より、前記支払済の金三〇〇万円を差引いた金二〇四万七、一四〇円が、原告両名の受けるべき残存損害額で、その半額一〇二万三、五七〇円が各原告の請求できる金額である。従つて原告等の請求は、右の範囲内で正当としてこれを認容し、その余は失当として棄却することとし、民事訴訟法第九二条、第九三条第一項但書を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 植村秀三)

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